勝手に時代考証


サイボーグ009『おわりノブナガ編』
漫画公開当時の解説、おぼえがきです。
表題 おわりノブナガ
「尾張」出身のノブナガと、本能寺で迎える「終わり」をかけてます。

表紙 戦闘服
鮮やかな朱色の戦闘服ですが、原作ではトーンを貼っていないため、何度も貼り直し悩み抜いた結果。グラデーションでようやく落ち着きました。

02 南蛮船
なぜか荒波の中を漂うジェロニモの前に、突如現れた南蛮船。ちょっと普通の設定ではないぞという印象付け?をしてみました。

03 バリニヤーノ神父
イタリア出身、イエズス会の東インド巡察師として1579年7月来日。フランシスコ・ザビエル来日の30年後のこと。

04 本能寺
ノブナガの京都での定宿。とはいっても掘りで囲まれた要塞。わかりにくいですが一コマ目は堀の上に架けられた橋です。

  ノブナガのえり
石ノ森先生の『マンガ日本の歴史メイキング覚え書き』P404のジュバンを重ねた人物より。よりノブナガらしくなりました。

  からくり
宣教師は機械仕掛けの時計や眼鏡、地球儀などをノブナガに送った。

05 巡察師
漫画ではけなされて?ますがバリニヤーノは、宣教師を束ねる偉い人。ノブナガから狩野永徳筆とされる安土城描いた屏風を送られる。

  黒い肌
1581年2月23日、バリニヤーノが黒人奴隷をつれノブナガに謁見。場所は安土城とも、記録からは本能寺の方が自然だし運命的なので。

06 蘭丸
小姓として有名な森蘭丸。正しくは乱丸。戦死した武将・森可成の子。実は弟の坊丸、力丸の三兄弟でノブナガにつかえ本能寺の変を迎える。

  洗う
はじめて黒人を目にしたノブナガは墨を塗っていると思い小姓に手拭いで洗わせたところ、白くなるどころか黒光りするので驚いた。信長公記より。

  伴正林
今年の4月7日にタイムリーに放送したNHK『歴史秘話ヒストリア』第35回「女中は見た!本能寺の変・信長最後の3日間」で知った実在の人物。甲賀群の人で1579年8月6日・7日の相撲大会で七人抜きの大活躍。ノブナガに召し抱えられた。その時18歳・・・。

07 相撲
ノブナガは大の相撲好きで、身分に関係なく度々相撲大会を開催した。現在の土俵の原型もノブナガが考案したという。

08 忍者
戦国はやっぱりニンジャ!ということで、いかにもなデザインに。

09 裸?のジェロニモ
意外と苦労したのが、戦闘服でないジェロニモ。腕の太さのバランスが…。

10 自己破壊プログラム
さすがにロボット忍者が残ってはまずいので、自然消滅してもらいました。

11 仕込杖
『人物探訪 日本の歴史 統一の覇者』に掲載されていました。1570年5月19日、杉谷善住坊に右腿を狙撃されたとも、そのためかも。

  弥助
ノブナガはバリニヤーノから黒人を献上され、弥助と名付け従者とした。モザンビーク出身の20代後半の男性。身長は六尺二寸(187センチ)怪力の持ち主で、箸を使えと言われても素手で食事をとったらしいです。

  少年使節
バリニヤーノは後に日本最初の遣欧使節として、天正少年使節団を九州の大友、有馬、大村ら三侯からつのり実現させる。

12 子供と
弥助はノブナガとその子どもたちに愛され、肩車をする姿が見られた。

  武田攻め
武田勝頼を攻め滅ぼす。戦闘はしてないだろうが、弥助も従軍したと考えられるため、ジェロニモでその雄姿を再現?

  ねぎらう
抵抗するものには苛烈を極めたノブナガだが、身近な家臣などの自分に対して誠実な者には、とても寛容であったらしいです。

  世界地図屏風
三コマ目の屏風。愛用したと伝えられ、福井県浄得寺に残る。

  明・南蛮
現在の中国および西欧地域。宣教師にはじめて地球儀を見せられ、瞬時に理解したノブナガは、日本人で初めて現実的な目線で世界を理解した人物。世界征服?の構想は後の豊臣秀吉による朝鮮出兵にもつながる。

13 明智光秀
竹林が印象的な老の坂は、ほんとは桂川を渡る前です。演出上、前後してます。光秀は渡河後にはじめて全軍に謀反の意を伝えたといいます。

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セリフ
「敵は本能寺にあり!」と「是非に及ばず」は本当に言ったか別として、やっぱり入れないとしまらないですよね!

本能寺の変
大軍の行軍音にノブナガが気付かないのはおかしいという指摘も近年ありますが、ノブナガは光秀軍の閲兵する予定でしたし、 川中島の戦いで上杉謙信は、夜陰に乗じ軍勢を武田信玄の目前に布陣させているので、問題ないと思います。プロの戦いですから。変に際してノブナガは、弓を二、三放ち、後は槍で戦ったようです。

16 伴正林最期
ノブナガの馬廻りを務めていた伴正林は、変の際、仲間と厩に籠って体勢を立て直すも、再び撃って出たところを討ち取られた。ノブナガに逃げるための馬を連れていくために奮闘したんでしょうね。

17 安田作兵衛
ノブナガに槍をつけた人物。森蘭丸に股間を槍でつかれたが、逆に蘭丸を討つ。後に病によって自害。命日は奇しくもノブナガと同じだったという。

  おちのびよ
変に遭遇した女中の証言より。

18 人間五十年
幸若舞「敦盛」の一節。一生が五十年で短いと嘆いているのでなく、人間の五十年は、仏の世界ではたった一日にしかすぎないという意味。

  坊主ども
常に私腹をこやし、私兵を養う仏教勢力は、常に政権の脅威であった。位牌に抹香を投げつけたという話は、仏教勢力への反発の表現。そこらへんは平田弘史先生の『劇画 信長公記』に詳しいです。

  光秀め
ノブナガの命を狙う者はたくさんいましたが、仏教勢力の駆逐に対して不信感を抱いていた光秀の突発的な謀反と解釈して描いています。

19 短刀
オリジナル。何か印象的な小物がほしいと思い、はじめは母譲りの扇?なんてのも考えましたが、ノブナガにとって大きいのは織田家の地盤を築き上げた父・信秀の存在だと思い、このようしました。

  倅・信忠
前夜にノブナガと本能寺で別れ、妙覚寺に移っていた信忠は、異変に気づき二条城に籠るも、明智軍に追い詰められ自害した。 ちなみに桶狭間の戦いで今川義元の首級をあげた毛利新介も信忠を守り籠城、運命を共にした。

  切腹?
切腹は本来、敗れたけど俺は間違っていない的なニュアンスがあり、攻められたノブナガは腹を切る必要も、時間もないと考えました。

  敦盛を舞う間もない
桶狭間の合戦前などここぞという時に敦盛を舞ったノブナガ。最後のコマのセリフは、あおむら純先生の『小学館版 学習まんが14 少年少女 人物日本の歴史 織田信長』から。印象的だったので使わせていただきました。

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見開き
石ノ森先生といえば見開き!なので絶対に入れようとがんばりました。セリフもコマ割りもない見開きは、僕の人生初でした。

22 怪ロボット
異質な世界を決定づける要因としてのダサカッコイイ?カワイイ?ロボット。かっこいいだけじゃだめなんです。

23 大六天魔王
大六天は仏教界における欲界。この世の他人の楽しみも全て自分のものにする大魔王。ノブナガの自称。人間五十年しかり仏教と距離を置きつつも色々詳しいノブナガは、単純に坊主嫌いだったと思います。

24 大爆発
この爆発は本当らしいです。なにせ要塞化している本能寺なので、火薬庫に引火とか、火をつけたとか。遺体も見つからないので、結論はノブナガならやる!!です。

織田家代々に仕えた柴田勝家は、賤ヶ岳の戦いで豊臣秀吉に敗れ、天守に火薬を集め腹を十文字に切り、大爆発させて自害したというので、もしかしたらこの本能寺の爆発を意識したのでは…という僕の憶測。

25 勢揃い
ついに009メンバーが勢揃い。なるべくセリフ量が均等になるように気を使ってます。チャンチャンコの再現率が異常に高いと自負してます。

26 黒人
ジェロニモは実際にはネイティブアメリカンなので、黒人である008(ピュンマ)の方が弥助には相応しかったのですが、むしろその違和感がこの作品の味となると考えました。また弥助は牛のような大男だというし、正直な所、純粋にジェロニモが描きたかったので・・・。

27 跡地
本能寺の跡地は現在、高校や養護施設。そのため爆発は校庭で。2007年の発掘調査で堀跡や高温で焼かれた大量の瓦の残骸が出土。

28 シルエット
良いキャラデザインはシルエットで誰かわかること。009は完璧!

  弥助その後
本能寺で戦った弥助はその場を脱し、二条城に籠るものの光秀軍にとらえられる。処分を問われると光秀は黒人は動物で日本人でもないから殺す必要はないとし、放免になり南蛮寺に預けられたという。その後の消息は一切不明…。

弥助に対するノブナガと光秀の対応は、その人物の差を物語ります。再び奴隷に戻ったのか、故郷に帰れたか、日本に残ったのか・・・今では謎の弥助のその後を想像することが、歴史の醍醐味ですね。


以上!暇つぶし解説 & 勝手に時代考証でございました。 最後までお付き合い頂き感謝です。